マニラのポーカープレーヤーを引退します。
サラリーマンの世界によくある退職ブログというものがあるならポーカープレーヤーの世界にも引退ブログもあっていいじゃないか、ということで書いておきます。
あれやこれやで15か月もマニラにいることになるとは。。。
自己紹介も兼ねて時系列で簡単にポーカーキャリア
2015年3月 やすなかむらにテキサスホールデムポーカーってのが面白いと紹介される
2016年6月 新宿のネコカジに通い始める
2016年9月 初めての海外遠征@韓国
2017年3月 プロを目指してマニラへ移住
→ポーカーで生存できるか@マニラ - tanakajiroの日記
2017年6月 自分のウデマエではポーカーだけでの生存はかなり厳しいことが判明
→【結論】ポーカーで生存できるか@マニラ No.25 - tanakajiroの日記
2017年7月 ゲストハウスSit&Go開業
2017年8月 キャッシュゲームの収支がプラスに転じる
2017年11月 余語プロから強烈な一言で嘔吐下痢症になる
マニライチ下手くそかもしれない・・・
— 余語葦織(Iori)@ベガス🇺🇸 (@iosan83) November 28, 2017
2017年12月 AJPC遠征@韓国
2018年1月 APT遠征@ベトナム 前滑りで心を骨折
2018年6月 マニラから退場 <=今ここ
時系列にするとルールを知って3年、ちゃんと始めて2年ってとこでしょうか。
もう5年くらいポーカーしてるつもりでいましたが、キャリア的には青二才もいいところですね。
キャッシュはちょいプラ、トナメは大負けの私が書き残しておいて価値のあることってなんだろうと考えたときに、ゲストハウス運営を通していろんなポーカープレーヤーと接点をもてたこと、第一線で活躍するプロ達と過ごした日々が頭をよぎりました。青二才ポーカープレーヤーから見たプロの世界、ポーカーキャリア。そのへんを書き残しておきたいと思います。※下記、長文です
■アマチュアとプロの違い、資質など。
ポーカーの世界にはプロ試験なんてありません、なので自分でプロだと名乗ればそれはプロということになってしまいます。ただ、これだと話がややこしくなるので、ポーカーだけで飯を食べているプロは一般的に「専業」と呼ばれます。僕の知っている限りライブトーナメントだけで専業してる日本人はいません。ほとんどの専業はキャッシュゲームを主体にお金を稼いでいます。そうするとすぐに幾らくらい稼いでいるのか?みたいな疑問が生まれますが、それはその人によるのです。ポーカーで家族を養う人もいれば、僧侶のようなギリギリの生活をしている人もいます。別に後者を悪く言っているわけではなく、ようするに低燃費な人はそんなに大きなリスクを背負わなくてもポーカーで生存することはできるのです。見方を変えるとこれは資質のひとつな気もします、日常生活を低コストで送ることができ、それに対して満足できるというのはみんながみんなできるわけではないです。毎週KTVや風俗に行き、飯は好きなものを好きなだけ食べないと満足できない!って人はやはり大きく稼がないと収支がおいつかないので、取るリスクも大きくなります。そうなると要求されるウデマエとバンクロールも大きくなります。
・専業の8割はやせ形(田中調べ)
・娯楽志向(お酒・たばこ・風俗・サイドギャンブル)ではない人が多い
・眼光が鋭い
マニラには10/20(20円/40円)というのが最も安いレートとしてあります。ただし、Rakeは10%で10BBcap、ほとんどのプレーヤーはバイイン50BB以下というかなり利益を出すのが難しいレートでもあります。僕自身、このレートではマイナス収支ですし、それをRake負けと位置付けて気にしてなかったんですが、今年に入って、このレートでグラインド(生活費をポーカーで稼ぐこと)している日本人プロとお会いしました。このレートでプラスにできるウデマエももちろんすごいですが、その利益で生活できちゃう低燃費な体質もすごい。どれだけ利益を出すのかというのと低燃費でありコストを意識するのかというのは等価であることを思い知った私にとって衝撃の出来事でした。
■ポーカーキャリア
僕は会社辞めるまでは普通ににサラリーマンしてましたし、社長秘書だったりしたので、どんな人が出世するかなんとなーく感覚をもっているつもりなのですが、プロポーカープレーヤーはサラリーマンしていても成功しただろうなって人だらけです。論理性があって、観察力があって、テーブルトークで魚に気持ち良く負けてもらう、そしてプレッシャーに強くタフな判断ができる。そんな人はサラリーマンでもさすがにうまくいきますよね笑 一方でサラリーマンのキャリアについては死ぬほど情報があるけども、ポーカープロのキャリアには情報がほとんどないのが現状です。一部のブログと木原さんの本くらいじゃないでしょうか。プロや専業、またはそれを志望する人にとって、共通したものは何か、その最小公倍数からなんとなーくポーカーキャリアというのが見えてきた気がします。キャリアというのは元々は車輪の跡を意味してたので思考プロセスとしてはそんなに大きく間違ってないと思います。
①ポーカーが三度の飯より好き
文字通り、ポーカーに取りつかれた段階。週1くらいでポーカーの夢を見る。
負けても楽しい。日々新しい発見があり、自分の上達を感じれる。
ゲームとしてポーカーが好き。
②負けるのが死ぬほど嫌い(収支トントン~ちょいプラ)
結果を出したい。人より知識はつけたので、経験をつみたい。ラッキーパンチに負けると腹が立つし、自分はそこそこ上手い方だ。
③美味しいシチュエーションは逃さない(専業可能領域)
どうやら俺はポーカーで飯は食えるようだ。もっと効率的に稼ぐ方法はないかな?
オマハもやるし、ヌルいテーブルや会場があれば海外遠征もいとわない。
④名声も欲しいかも(ベテランクラス)
かなりキャリアも積んだし、トナメに出る余裕もでてきたので一発当てたいなー
テーブルで俺より強い奴に会うことが最近ないな、少し刺激不足
⑤自己実現領域(トッププロ)
ポーカー業界ももうちょっとこうなればいいなー
自分にできることないかなー
ざっくりと書きました。
それとなくマズローの欲求5段階説を意識してみました。
人によって濃淡はあるし、駆け上がり方も時間もまちまちだけど、ざっくりとしたプロセスを書きました。人によっては名声なんて興味ねー!なんて人もいることはわかってるし、一方で当面のキャッシュより名声を取りたいって人もいるのも事実です。あくまでもたくさんいる中で共通する部分を抜き出して、それとなく順序にしてみたという感じです。僕自身は③を目指して、②止まりで、でも④もたらればで!みたいな動きをしていたかと思います。
ゲストハウスには1年で60人くらいの人にお越しいただいて、そのうち6割くらいは開催中のマニラのトーナメントに参加が目的で残りの4割は専業か専業志望の人でした。
僕個人としては自分もそうだったので②の領域の人が③にチャレンジする場所として選んでいただいたのが嬉しく、また誇りに思います。
そのうちの一人、T氏(20代後半)について書いておこうと思います。
現在ポーカー歴1年弱、ゲストハウスに来た時はオンラインを少しやったことがある程度でした。ちなみに専業チャレンジをしてプラスになる人の方が少数派で、ましてや生活費をポーカーで稼げる人は稀有です。※現役の専業は除く。
そんな中、彼はライブ経験もほとんどゼロで、オンラインちょこっとやったことある程度で生き抜けるはずがないと正直思ってました(失礼
初期段階に同卓したときもAKをオーバープレーしてたし、少し厳しいかなーなんて思ってたら数か月後に彼はパンク(破産)してしまいます。
ゲストハウスでパンクして文無しになった人を我々は敬意を込めてヨンゴー組と呼んでいました。当時、Sもぐさんと一緒にヨンゴー組になった彼のポーカーキャリアは一見すると終わったかのように思えました。(初代ヨンゴー組はしまむー笑)
が、そこからは彼は違っていました。
再度タネ銭を手に入れた彼はレートを25/50に落とし、その後一切50/100を打つことはなく、好きだったトーナメントも大幅自粛して地道にコツコツとキャッシュを打ち続けました。あれよあれよとグラインドが続き、ポーカーだけで飯が食えるレベルになりました。最近ライブで同卓した彼はチェックコール寄りのプレーヤーになっており、リバーレイズでがっつりバリューをとられてしまいました。
あっさり超えられたかも。ポーカーはセンスなんだなぁ
と思い知ることとなりました。
彼のようにマニラで専業チャレンジするにあたり、何点かアドバイスがあります。
・1か月、200時間打てる時間を確保すること。
・1000BB(25/50だと10万円)のタネ銭とそれとは別に生活費を用意しておくこと。
・愚痴を言ったり、人に相談できる環境を用意すること。
・あまり期待しすぎないこと。
それぞれちゃんと理由があるんですが、すでに長文なので割愛します。
■今後について
ここからは私ごとです。
すでに長文でここまで読んでいただけで感謝です。
ちなみにマニラのポーカープレーヤーをやめるだけで、ポーカーやめるわけではありませんのでそこはご容赦ください。ポーカーは生涯やると思います^^ とりあえず6月は東京に戻って、東京の拠点を引き払って実家のある九州の方まで撤退する予定です。東京の事業も法改正で撤退を余儀なくされ、実家の方の事業もそろそろ誰かが面倒をみないといけない段階なので、本意ではないですが限界まで撤退します。そして、基盤を作った上で、2年後には何か仕掛けていきたいなと思っています。
ポーカーはオンラインと福岡のライブがメインになるかと思います。が、友達もいないし、僕は大変不安です。誰か見かけたら声かけてやってください。
★ゲストハウス★SIT & GO MANILAは僕自身は運営・経営から外れますが、共同ホストをしていた中川ハジメさんが継続します。場所は移動しましたがCODのすぐ近くです。
面白がって泊まってくださった方、また、面識はなくとも紹介してくださった方々にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
最後に、
今年1月にAPTベトナムでスタック300BB+でのプレーを経験しました。
KKで4betをしたら5betオールインが返ってきて降りたりしてました。
普段60BB~100BBしかプレーしていない私にはこのスーパーディープで、ロングストラクチャーのポーカーは完全に別のゲームで、まるで夜の森に迷い込んでしまったような方向感覚をなくしてしまいました。ポーカーは奥が深い。
来年のWSOPでお会いしましょう
■2020年1月追記
未だに読んでいただける方がいることに感謝いたします。
おかげさまで2019年はWSOP行けました^^
今年もどこかしら顔出しますので良かったらフォローしてください↓
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